味や香りを科学的な手法で分析、評価する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区/代表取締役:小柳道啓)は、2015年度に改正される「日本人の食事摂取基準」の中から“減塩”に注目し、「塩分嗜好と塩分に対する意識の一般調査」を実施しました。[調査実施期間:2014年12月10日〜24日/調査対象:全国の成人男女652名]
結果からは、普段の食事で濃い味付けを好む傾向(濃い味が好き、どちらかと言えば好きが64.3%)が確認できました。五味の中でも塩味は濃い味の輪郭を成しますが、「塩分」を気にしているのは79.1%で、およそ8割の人が塩分を気にしていることがわかりました。また多くの人が塩分を気にしている一方で、何かしらの塩分への対策を行っているのは半分以下の43.7%で、半数以上は塩分を気にしてはいるが、実際にはそれに対するアクションを現時点では起こしていない・または起こせていないということがわかりました。次に“減塩商品”に対するイメージを聞いたところ、「健康的(73.5%:複数回答)」が最も多い反面、「味が薄い(39.8%:複数回答)」が次に多く、濃い味付けを好む傾向が強い中で“薄味”というイメージが前述の“塩分を気にはしているがノーアクション”の一つの要因であることが示唆されました。また、「味が物足りないが為に減塩調味料を通常より多く使ってしまい結果的に減塩効果が薄い」や「高価である」などといった、ネガティブなイメージも見受けられました。最後に、現時点で減塩商品を積極的に購入するか否か、という質問に対しては「買う48.8%:買わない51.2%」で、ほぼ同じ割合でした。
エンドユーザーの健康志向はすでに定着しており、このことは今後も大きく変わることはないでしょう。その中で減塩というのは重要なキーワードであり、現状の“減塩”に対するいくつかのマイナスイメージ(薄味、満足感の不足、高価など)を極小化することで、より魅力的で効果的なワードに成り得るのではないでしょうか。
サマリー
■「健康志向」は“ブーム”から“定着”。「減塩」は気になるが、消費行動はこれから。
調査結果から、
- 普段の食事で「濃い味」は“好き(22.7%)”、“どちらかと言えば好き(41.6%)”で全体の6割以上を占めました。
- 普段の食事で全体の79.1%が「塩分を気にしている」と回答したが、その内、塩分対策を行っているのは43.7%。
- 減塩商品へのイメージは“健康的”、“安心”、“味が薄い”、が上位となりました。
この結果は、家族や本人の健康の面から塩分を控えようという気持ちはありながらも、現時点では実際にその気持ちが行動に表れていないことを示していると考えられます。その原因としては、商品の味に対する満足感不足や商品が高価格であるというイメージが障壁になっていると推測します。
■塩分控えめでも満足感を満たしてくれるのは、和食の象徴「旨味」
- 通常商品と減塩商品とでは、どのような味わい設計の違いがあるのか、インスタントみそ汁を例に、味覚センサーで測定、解析いたしました。
- 減塩商品は文字通り塩味が弱く、旨味の余韻も通常に比べ弱いが、それを補うべく、先味としてのコク(苦味)、旨味、酸味が強くなっており満足感が不足しないような工夫がされていると考えられました。
「健康志向」は“ブーム”から“定着”。「減塩」は気になるが、消費行動はこれから。
一般調査では、20代〜80代の一般男女およそ650名を対象に実施し、塩分の嗜好とそれに対する意識、行動について把握を比較するために「濃い味」への嗜好と「塩分への意識」について質問しました。
結果は、濃い味が好き(22.7%)、どちらかと言えば好き(41.6%)【図1】で、全体では64.3%が濃い味を好む傾向が確認できました。また、食事の「塩分」を気にしているのは79.1%【図2】で全体の8割近くが塩分を気にしているようです。ただし、Q1で「好き」と回答した人数と、Q2で「気にしていない」のそれは、ほぼ同数であることから、濃い味が好きな人は塩分に対して現時点では意識していないという見方もできそうです。
【図3】にQ1の世代別の割合を示しました。濃い味を好む傾向の世代別割合は20代で最も多く、30代〜50代は同様、60代以上が最も少ないという結果になりました。また、塩分対策に関する行動の有無についての結果が【図4】です。現時点で何かしらの塩分対策を実施しているのは全体の43.7%で半数以上が対策を実施していない、またはできていないという結果となりました。一方、Q2の「塩分を気にしている(79.1%)」割合に比べ、Q3の塩分対策を「している」は、43.7%に止まっており、「塩分を気にしているが、行動には移していない」という人が少なからずいることが見てとれます。
「低塩」、「減塩」等の味に対するイメージを聞いた(複数回答)ところ、最も多いのは「健康的」でした(【図5】)。これに関連して「安心」が3番目に多い回答数でした。一方で味について「味が薄い」、「満足感がない」という回答数が上位5番までに入っており「おいしくなさそう」という意見も比較的多いことがわかりました。また味ではないところで「高価」という回答も多く見られました。
Q5では現在「減塩商品」を積極的に購入しているか否かを聞きました。結果は、「買う」と「買わない」がほぼ同率となっていました(【図6】)。「買う」という理由には「醤油や梅干など決まった商品に限る」や「こどもに薄味に慣れて欲しいから」、「家族の血圧のため」という意見が見られ、「買わない」には「値段が高い」、「味が薄そう」、「レシピで工夫すれば通常のものでも対応できそう」という意見がありました。したがって、塩分については多くの人が気になっているものの実際には行動していない人が約半数いることがわかりました。2015年度から「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」が改正され、メーカーからも様々な工夫を施した減塩商品が多数リリースされていくことが予想されます。「高価」、「味が物足りない」というイメージが払拭されていくことで「減塩」市場の動きが活発になると期待できます。
2013年〜2014年に測定した減塩みそ汁(18銘柄)と通常みそ汁(50銘柄)の平均値をそれぞれ算出し、比較しました。
【図7】より、減塩商品は文字通り塩味が弱く、旨味の余韻も通常に比べ弱いものの、その代わり先味としてのコク(苦味)、旨味、酸味が強いことがわかりました。
【図8】は、味分析値を呈味成分濃度(%)で表現したものです。減塩商品は通常商品に比べ、塩味がおよそ20%減少していますが、旨味が約20%、コクが10%弱増加していることがわかりました。
※味覚センサー(インテリジェントセンサーテクノロジー社製)にて測定した結果をもとに解析しています。
※コク(苦味)とは複合味(基本5味+渋味での味の要素が多いこと)を意味しています。
■調査実施概要
調査名「塩分嗜好と塩分に対する意識調査」
調査対象者:全国の男女、20歳〜60歳男女
調査方法:インターネット調査
調査実施会社:総合商研株式会社
調査実施機関:2014年12月8日〜24日
・味覚センサーでの分析は味香り戦略研究所の自主調査によるものです。
味香り戦略研究所について
味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】
本件に関する報道関係者 お問合せ先
株式会社味香り戦略研究所 早坂、高橋
TEL 03-5542-3850 / FAX 03-5542-3853