味や香りを科学的な手法で分析、評価する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長 菊池健司、総合商研株式会社(本社:北海道札幌市、代表取締役社長 片岡廣 幸)のグループ会社)は、消費者の減塩に対する関心具合や減塩対策における課題を明らかにすることで、「減塩」ひいては「減塩商品」訴求の可能性はどこにあるかを探るべく意識調査を行った。【調査実施期間:2016 年 9 月 16〜23 日/調査対象:全国の男女 771 名】。
本調査の背景にあるのが、健康増進法に基づき厚生労働省が 5 年毎に改定を行う「日本人の食事摂取基準」の最新 2015年改定基準である。最新の基準によると、1日の推奨塩分摂取限度は前回の 2010年改定基準に比べ、男性 9.0g→8.0g 以下、女性 7.5g→7.0g 以下となり、生活習慣病予防の一環として減塩が推奨されていることがうかがえる。果たして消費者の「減塩」に対する意識はどの程度浸透しているのだろうか。
サマリー
■塩分対策最大の課題は「摂取カウントの難しさ」
■未実践者にとって減塩商品は一種の“食わず嫌い”
積極的な塩分摂取目安の提示とレシピ情報の提供がポテンシャルユーザー取り込みの鍵となり得る
食事の塩分を気にしているか、実際に塩分対策をしているかを質問したところ、実に78.1%もの人が「塩分を気にしている」という結果【図1】となり、塩分摂取量への関心の高さがうかがえた。しかし、塩分を気にしている人の割合は多いものの、実際に「対策をしている」と回答した人は32.4%に留まった。関心はあるものの対策できていない45.7%の人(以下「ポテンシャルユーザー」とする)を如何に取り込むかが、減塩商品訴求の鍵である。ポテンシャルユーザーが減塩対策実践に結びつかない原因は何だろうか。
そこで、塩分対策実践を妨げる要因を探るべく、日常生活で減塩生活が難しい理由について質問した。対策をしている人、していない人共通して「塩分摂取量のカウントが難しい」という回答が最も多かった【図2】。食事における”カウント”の代表格とも言える「カロリー」こそ、今や身近なものとなってきているが、塩分に関してはまだまだその認知度は低い。そのため、塩分対策をしていない人はもちろん、対策をしている人でも、実際に自身が摂取した塩分量がどの程度なのかを把握することは難しいようだ。また、塩分対策をしている人においては、「減塩生活に難しさは感じない」という回答が 39.6%寄せられた。決して多くはない数字だが、塩分対策をしていない人の回答率と比較すると、一見ハードルが高そうに思える減塩対策も、始めてしまえば案外難しさは感じないようだ。
次に、「低塩」、「減塩」、「塩分控えめ」に対するイメージを質問したところ、対策をしている人していない人共通して「健康的」という回答が最も多かった【図3】。減塩が体にポジティブな効果をもたらすということは、塩分対策を実践しているしていないに関わらず、共通の認識であるようだ。しかし、対策をしていない人において「健康的」に続くイメージは「味が薄い、満足感がない」、「美味しくなさそう」といった味わいに関するネガティブな回答であった。一方、対策をしている人は比較的味わいに関するネガティブイメージが低かったことを考えると、塩分対策未実践者にとって「減塩」は一種の“食わず嫌い”のようなものであると考えられる。
一口に「減塩」と言っても、家庭で調味料の量を減らす工夫をしている人もいれば、減塩を謳った商品に置き換えている人もいるだろう。そこで、「減塩商品」に興味があるか、積極的に買っているかを質問した。その結果、塩分対策を実践している人の 66.4%が「興味があるので、積極的に買っている」と回答した【図4】。塩分対策実践者の多くが減塩商品を活用しているようだ。一方、塩分対策をしていない人においては「興味があるが、あまり買っていない」と回答した人が 77.0%と最も多かった【図5】。ここでも、「減塩」への関心は高いものの購入には至らないポテンシャルユーザーの多さがうかがえる。ポテンシャルユーザーが購入まで結びつかないのはなぜだろうか。
そこで、「減塩商品」に対する不満を質問した。その結果、塩分対策実践者、未実践者共通して「価格が高い」と回答する人の割合が最も多かった【図6】。「減塩商品」はレギュラー品に比べまだまだ高額な商品が多いことから、妥当な結果であると言えよう。塩分対策未実践者においては、「味が薄い」、「美味しくない」、「味わいなど満足感がない」といった、イメージについて尋ねた時と同様、味わいに対するネガティブな回答も目立った。また、塩分対策実践者においては、こちらもイメージに関する質問と同様、未実践者に比べて味わいに対するネガティブな回答が少なかった。このことから、「減塩商品は美味しくない」というマイナスイメージが先行しがちだが、実は食べてみれば味への不満は感じにくいことが示唆された。
減塩商品を訴求する上で鍵を握るのが、先に述べた「ポテンシャルユーザー」である。“食わず嫌い”のポテンシャルユーザーに、まずは減塩商品を食べてもらい、減塩商品に貼られた「美味しくない」というレッテルを剥がすことができれば、減塩商品訴求の可能性が広がりそうだ。そこで、味のバリエーションを豊かに持たせることがポテンシャルユーザーの関心を惹くことかできるのではないかと考え、食べてみたい減塩レシピについて質問を行った。その結果、根強い人気を誇る旨味を使用したレシピの他、食材本来の素材感や特徴的な香りを有するレシピが、ポテンシャルユーザー含めた塩分対策未実践者と、塩分対策実践者共通して人気であった【図7】。両者同様の反応が示されたということは、こうしたレシピ情報の積極的な提供は、ポテンシャルユーザーの関心を惹くと同時に現実践者の活性化も狙えるのではないだろうか。
今回の消費者調査により、「減塩」訴求における 2つのポイントがみえてきた。消費者が抱える減塩対策の課題「摂取カウントの難しさ」の解決と「減塩=美味しくない」という負の味わいイメージの払拭である。今や外食店のメニューに記載されていることも珍しくない程、我々の食生活に身近な存在となったカロリー表示のように、塩分表示についても、パッケージやPOP等を通して塩分摂取目安を積極的に提示し、その認知度を浸透させることが、塩分対策実践の敷居を下げる第一歩となり得るだろう【図8】【図9】。また、味わいのマイナスイメージが先行しがちなポテンシャルユーザーにとって、減塩商品は一種の“食わず嫌い”である。つまり、食べてもらうだけでそのイメージが改善される可能性も期待できるのだ。ポテンシャルユーザーが「これなら食べてみたい」と思えるような、バリエーションに富んだレシピ情報の提供も減塩商品訴求に有効的な手段であると考えられる。塩分摂取カウントのわかりやすい表示とレシピ情報がセットになったような構造が確立されれば、消費者にとって「減塩」はより身近な存在となり、その活動は活性化されていくのではないだろうか。
「減塩」訴求の鍵となるのは、
認知度浸透を図る塩分摂取目安の提示とレシピ情報の積極的な提供
■調査実施概要
調査名「減塩に関する意識調査」
調査対象者:全国の 10 代〜70 代以上の男女
調査方法:インターネット調査
調査実施会社:総合商研株式会社
調査実施期間:2016 年 9月 16日〜9月 23日
有効回答者数:771 名
味香り戦略研究所について
味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】
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