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自主研究

パッケージデザインによるおいしさ訴求
~おもしろパッケージが与える心理効果とは?~

味や香りを科学的な手法で分析、評価する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区)は、商品デザインによるおいしさ訴求サービスを開始いたします。視覚から得る情報量は多大であり、時に味やにおいの感じ方を変化させることが知られています。
味香り戦略研究所では、従来の味覚センサーによる味分析や官能評価に加え、アイトラッキングによる商品間の視線の軌跡や注目時間を計測することによって、効果的な商品デザインや商品棚割のご提案を行って参ります。


サマリー

■おもしろい商品パッケージは好まれる傾向がある。
■アイトラッキングが証明した、商品のデザインによる注目度の違い。
■今回の実験では、見た目から想像される味に有意差がみられた。
■多角的なおいしさを追求した商品が今後開発される可能性が高い。


見た目(視覚)による「おいしさ」への影響はなぜ起きるのか?

五感の中でも視覚から得られる情報は多大で、ヒトは、形状や色により物体の性質を判断しています。例えば日本人が青いケーキをみるとギョッとして食欲を失ってしまうことは、周知の事実ですが、海外においては青いケーキや鮮やかでカラフルな食品が販売されています。ヒトの視覚の嗜好性(好き・嫌い)は、後天的に、つまり経験的に培われる(記憶色の形成)と言われており、日本においては青い食べ物が少なく、また藍や紺などの色彩が伝統的に「虫除け」として用いられてきたことなど諸説あることから、青いケーキなどは視覚的に嫌悪感を与えることが多いと考えられます。つまりヒトは記憶色を好むということになりますが、加えてそれ以上に明度や彩度がやや高いほうがおいしそうに感じる傾向があります。こうした知見は食品のCMやポスター、パッケージに利用されており、表現色を実物(記憶色)よりきらびやかに見せることで、商品購買意欲を促進しています。

カルビーのエイプリルフール企画商品の実現

毎年、企業がエイプリルフール企画で愉快なニュースリリースを配信していますが、今年は、カルビー株式会社が自社商品の「ポテトチップスコンソメW(ダブル)パンチ」(コンビニ限定商品)を「ポテトチップスコンソメW(ワロス)パンチ」として発表し話題となりました(カルビー2016.4.1ニュースリリース参照)。
また、実際にエイプリルフール企画のパッケージを商品化することが決定したため、弊社では、そのパッケージのユニークさを数値化し、商品の見た目が味に与える影響の有無について自主調査することにしました。

【図1】コンソメ味を彷彿とさせる黄金色を上下に配し、中央は白地にアスキーアートという
斬新なパッケージデザインのコンソメワロスパンチ

アイトラッキング(Tobii X2-30Compactによる)

この商品を実際のコンビニエンスストアの棚割りを想定し、さまざまな商品と共に陳列をした場合、どのような見方をされるのでしょうか。棚割りのパターンを2つ用意し、各20秒ずつ測定を行い、ヒートマップを以下に示しました。(※調査パネルは弊社専門訓練済パネル・男女含む30-40代・12名による)

【図2】アイトラッキングヒートマップ パターン1(上)・パターン2(下)

視線の注目の度合いを見ると、中央付近とコンソメワロスパンチの辺りが最も赤色系を示しており、注目度が高いことが予想されます。今までにない白地の多いデザインのため、逆にそれが視線を集めていると考えられます。

ヒト官能評価による見た目の評価

果たして、ユニークなパッケージは消費者にどんな味を連想させるのでしょうか。 カルビーの3商品のパッケージから連想される見た目の印象や味について、以下の4つの設問項目を7段階で評価し、分散分析を行いました。

【図3】(左)コンソメパンチ (中央)コンソメダブルパンチ (右)コンソメワロスパンチ

Q.1 目立ちやすさ・インパクト
Q.2 おもしろさ
Q.3 見た目から想像する中身のおいしさ
Q.4 見た目から想像する味の濃さ

Q.1「目立ちやすさ・インパクト」についてはサンプル間に有意差が確認できませんでした。
コンソメワロスパンチの中央白地に細い文字の集合体で構成されたパッケージデザインは、一見すると白黒の濃淡のようですが、よくよく見るとアスキーアートと呼ばれる文字アートであることが判ります。コンビニの棚を再現したアイトラッキングでは多くの視線を集めましたが、こうしてコンソメ味のパッケージ同士を比べた場合、この白と黒のコントラストは、意外とインパクトがないと写っているようです。

【図4】目立ちやすさ・インパクト

Q.2「おもしろさ」については有意に差が見られ(p<0.05)、ワロスパンチは最もおもしろいという評価となりました。
おもしろさは、味の評価に何らかの影響を与えるのでしょうか。

【図5】おもしろさ

Q.3「見た目から想像する中味のおいしさ」については有意に差が見られ(p<0.05)、コンソメワロスパンチが最も低い結果となりました。これは白地部分や文字のデザインが大部分を占め、外装から中味が想像できない、または、いつもと異なる商品との捉えられ方が強くなっていると考えられ、何かしらの違和感があるのだと予想されます。パッケージのおもしろさからは、中味のおいしさは連想しづらいのではないかと考えられます。しかしながら、この違和感(ギャップ)を一つの購買意欲のフックとして捉えることもでき、中味に対する興味を引く効果があるかもしれません。

【図6】見た目から想像する中味のおいしさ

Q.4「見た目から想像する味の濃さ」については有意に差が見られ(p<0.05)、コンソメワロスパンチは味が薄そうと感じられるようです。これも白地が大部分を占めていることが要因と考えられます。味と色は密接な関係があり、例えばコーヒーカップの色が濃いほどコーヒーの味が濃く感じられる傾向があります。このように無彩色で味の想像しにくい白は、多くの官能評価の食器、またはそのものの味わいを楽しめる器として一般でも広く用いられています。しかしながら、味が薄そうと想像してから食べてみると、意識のギャップから味がとりわけ濃く感じることがあるかもしれません。

【図7】見た目から想像する味の濃さ

コンソメワロスパンチの味わいは?

パッケージから受ける印象では、明らかにコンソメダブルパンチと差があったコンソメワロスパンチですが、果たして実際の味はどうでしょう。味覚センサーで分析したところ、コンソメダブルパンチとコンソメワロスパンチ、実際の味わいに差はありませんでした(レーダーチャート1 ※1.0の数値差が大多数のヒトが有意差を感じる濃度差)。

【図8】パッケージの違いによる味の差

まとめ

今回のことから、商品の見た目の差が味覚をはじめとする五感に影響をおよぼすことが示唆されました。嗜好を決めるのはもちろん味だけではありません。昨今では、「パケ買い」や「ジャケ買い」といった言葉もあるように、“中味”はともかく、商品の“見た目”そのものが購入の動機になることがあるようです。これからは、“見た目”で直接的に“中味”のおいしさ感を伝える商品だけでなく、今回のコンソメワロスパンチのように、「おもしろい」という興味や好奇心といったものに働きかける商品が増えてくると考えられます。時にそのおもしろさが商品の魅力となり、消費者の興味を煽り、購買意欲を掻き立て、ひいては、「おもしろい」、「楽しい」といった感情が、「おいしさ」や「満足」を向上させる要因に成り得るのかもしれません。
アイトラッキングや脳波計などを利用し、様々な角度から更なるおいしさを追求した商品が現れる時代が目前に迫っています。

【図9】おもしろさが加わった味わいのバランス

味香り戦略研究所について

味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】

本件に関する報道関係者 お問合せ先

株式会社味香り戦略研究所 吉田・髙橋
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