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自主研究

「家庭のカレーは後味が決め手!」
「味覚データ×市場データ」から味のトレンドを探る

味や香りを科学的な手法で分析、評価する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区)は、味覚データから見られるカレールーの味わいと市場データを組み合わせて解析することにより、各家庭で好まれるカレールーのトレンドを探りました。


サマリー

■各ブランドの特徴は、先味(コク・うまみ・塩味)にあり
■カレールーに必要なのはスパイス感とうまみの余韻
■ちょい足しエッセンスは先味に効く物を

カレールーの味わいは時代に左右されにくいが・・・味の決め手はスパイス感&うまみの余韻にあった!


日本の国民食といっても過言ではないほど、家庭での味が顕著に表れるカレー。各家庭で様々な調味料を加えたり、カレールーを2種類以上ブレンドしたりと、カレーは家庭でアレンジされる機会が多いメニューであると言えよう。市場には50種類を超えるカレールーが販売されているが、それぞれの味にはどんな違いがあるのか?また、それらをブレンドすることで生まれるカレールーの味わい(➡消費者が好む味わい)について分析を実施し、家庭で食されるカレーの味わいと販売額が高いカレールーとの相関関係を見出すべく、調査を行った。

各社のカレールーの味わいは?

日経POSデータ(2014年5月~2016年4月)から、販売額が高い4ブランド(ハウスバーモントカレー、S&Bゴールデンカレー、ハウスジャワカレー、ハウスこくまろカレー)をピックアップし、それらの味わいを解析した。
※販売額上位20種類の平均をゼロとした。

【図1】ハウスバーモントカレー
【図2】S&Bゴールデンカレー
【図3】ハウスジャワカレー
【図4】ハウスこくまろカレー

「りんごとはちみつ」のCMで昔から親しまれている「ハウスバーモントカレー」は、直近2年間のPOSデータ(2014年5月~2016年4月)では常にトップを維持し、発売から50年以上たった今でも親しまれているロングセラー品であることは言うまでもないが、この商品の味は塩味が特徴的であると言えよう。一方で、同じハウス食品の「こくまろカレー」の販売動向は季節変動が緩やかで、一年を通して好まれる味わいであると考えられる。実際、【図4】からも分かるように、各味覚軸で突出したものがなく、様々な食材とバランスよく調和できる味わいであると考えられる。ミックスする相手の味わいを活かすという意味では誰色にも染まれるというところが「こくまろカレー」の最大の個性といったところだろうか。

上位4ブランドの中で、販売動向の季節変動が比較的激しいのがハウス食品の「ジャワカレー」であり、夏場に売上が伸びる傾向があるようだ。味わいとしては塩味が他ブランドと比較すると非常に弱く、いわゆるしょっぱさが弱いと言うよりは控えめな味わいであり、夏場向きの商品であると言えよう。なぜなら、他カテゴリにおいても気温が高い季節には相対的に味がライトな商品が多く並ぶという結果が過去の調査から確認できているからである。

カレールー市場は、上位4ブランドにかかわらず、他カテゴリに比べ販売動向に大きな増減がないのが特徴であると考えられるが、そんな中、販売動向に伸びが見られたブランドがエスビー食品の「ゴールデンカレー」であった。味わいの傾向も他とやや異なっており、他ブランドは甘口・中辛・辛口で大きな違いがないのに対し、同商品は甘口・中辛と比較して、辛口は異なった味の傾向が現れている。販売動向の伸びと味の傾向の相関までは特定できていないブランドではあるが、今後の動向が気になるブランドであると言える。

高価格帯カレールーの味わいは?

今回の調査では、販売額の高さに加え、メーカー希望小売価格が¥250以上の商品を高価格帯商品と位置付け、①エバラ食品 横濱舶来亭こだわりの中辛、②S&B ヱスビー食品 フォン・ド・ボーディナーカレー(中辛)、③ハウス食品 プライムジャワカレー(中辛)の味わいも調査した。
※販売額上位20種類の平均をゼロとした。

【図5】高価格帯商品

高価格帯商品の味わいは、傾向としてうまみに特徴があると考えられる。今回選んだ3種の中でグラム単価が高いのは、ディナーカレー(97g):¥308(税別)、¥3.18(グラム単価)、プライムジャワカレー(117g):¥272(税別)、¥2.32(グラム単価)、横濱舶来亭こだわりの中辛(180g):¥334(税別)、¥1.86(グラム単価)の順になる。次に【図5】の旨み軸を見てみると、ある程度類似した傾向を示していることが分かる。うまみが強いことで食べた瞬間のインパクトが生まれ、プレミアム感や満足感を演出していると考えても良いだろう。

カレールーをブレンドした時の味わいは?

次にカレールーのブレンドについての結果である。カレーは調味料を加えたり、カレールーを2種類以上ブレンドしたりと各家庭で様々にアレンジされる料理である。このことから、いわゆる“家庭のカレーの味”を把握するため、ブレンドしたカレールーの味わいを分析した。

【図6】分析を実施した組合せ
【図7】二次元散布図:コクとスパイス感
【図8】二次元散布図:うまみとその余韻

ブレンドすることで得られる味わいのメリットは、【図7】【図8】の通り、スパイス感とうまみの余韻の増加にありそうだ。これはブランドに左右されることなく得られた結果であり、消費者がカレールーに求めている共通の要因と言えるのではないだろうか。

カレールーのブレンドでスパイス感とうまみの余韻を得たカレーの味わい。では、各家庭の個性はどこにあるのだろうか?各味要素の詳細に目を向ければ、コク、スパイス感、うまみ(先味、後味)のバランスにそれぞれ違いが確認できる。さらにそれぞれの家庭では、ブレンドに加え、様々な調味料を加える事が多く、このちょい足しエッセンスも家庭の味を決める大きな要因だと考えられる。ルーそのものが後味に影響を与えている割合が高いことから、ちょい足しについては先味に変化を与えるものという考え方もできる。

この、主婦がひと手間を加える過程を尊重しつつ、家庭味のベースを支える味の選択肢としての役割を持った商品が増えることで、さらなる市場の活性化が期待される。

消費者が求めているカレールーの味わいは、
スパイス感とうまみの余韻!

味香り戦略研究所について

味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】

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株式会社味香り戦略研究所 矢嶌
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