多品種の野菜ジュースを用いた料理は、味のバランスがいい!
~生野菜より苦味が少なく、トマト缶より甘味も強い、多品種の野菜ジュースでの調理~
味覚や香りを科学的な指標で評価する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区/代表取締役:菊池 健司)は、働くママの増加に伴う、時短でおいしく料理を作るニーズや、昨今の野菜の高騰などから、レシピサイトでも注目されている「野菜ジュース」を調理に用いる効果を味覚センサーで分析し、味の違いを比較しました。
結果、多品種の野菜ジュースを用いると、味のバランスが取りやすく、生野菜から料理するよりも、酸味や苦味のバランスを整える「調味」が簡単にできることが確認されました。特に、生野菜では「苦味」が立ち、トマト缶では「甘み」が弱く、商品や素材によっては、味のバランスを調えることが難しいことがわかりました。
味分析のスペシャリスト 味香り戦略研究所 ”味覚参謀” 菅 慎太郎は、「日本人のおいしさの根幹は、『調和の取れた味』であり、味の決め手となる「出汁」のように野菜ジュースを用いることで、誰でも簡単に味の調った料理を作ることができる」と分析しています。
サマリー
■料理に生野菜を足すと、苦味が出やすい。野菜ジュースやトマト缶の方がバランスがいい。
- じゃがいも、にんじん、たまねぎ、でミネストローネを作るというシンプルなレシピに、生野菜、トマト缶、野菜ジュースを足し、味の変化を検証
- 生野菜を足したサンプルは、トマト缶や野菜ジュースより、苦味が強く、味のバランスを調えるのが難しい
■野菜ジュースで調理したものは、トマト缶で調理したものより甘味が強い。野菜ジュースの中では多品種の野菜ジュースを使用して調理したものがより甘い。
- トマト缶<約3 種の野菜ジュース<多品種(40種以上)の野菜ジュースの順で、甘味が強い
- 多品種の野菜ジュースで作った料理は甘味が強いので、甘味を引き出すために煮込む必要も無く時短にもつながる
■「多品種の野菜ジュース」はそのまま飲んでもおいしいが、「出汁」のようにも活用できる。
- 「多品種の野菜ジュース」を調和が取れた味の決め手となる「出汁」のように調理に活用すると、多くの野菜を手軽に取れるだけではなく、料理が簡単においしくなり、さらに時短にもつながる
料理に生野菜を足すと、苦味が出やすい。野菜ジュースやトマト缶の方がバランスがいい
身体の健康を考えて、「多くの野菜を摂取したい」という声は多数聞かれます。とはいえ、たくさんの野菜を調理に用いるには手間もコストもかかるものです。野菜高騰が続く昨今は、特に手軽で安価に野菜を摂取する方法を模索する消費者も多く、そんな中、調理の素材の1つとして「野菜ジュース」を用いる方法は、レシピサイトで既に多く見られます。
生野菜を用いた調理とトマト缶を用いた調理、そして野菜ジュースを用いた調理、実際に同じレシピを作ることによって、どの程度「味に違いがあるのか」を検証してみました。
〔実験計画〕
サンプル組成方法:ミネストローネを作り、材料として生野菜やトマト缶、野菜ジュースを用いる。
レシピ:
(1) じゃがいも、にんじん、たまねぎ、は1cm角に切る。
(2)フライパンを熱し、(1)を加えて炒める。
野菜がしんなりしたら、ミキサーで粉砕、基本レシピ完成
→各サンプル用に等分する(★)
(3)★に【生野菜】や【野菜ジュース】、【トマト缶】を加え、水100ccを加えて煮立てる。
(4)中火で 20 分ほど煮た後、常温に冷めるまで留置する。
※野菜からの出汁を検証するため、コンソメは添加しない
※油、味付けの塩とこしょうは添加しない
[組成サンプル一覧]
① 基本レシピ
② 基本+別の生野菜
③ 基本+多品種(40種以上)の野菜ジュース
④ 基本+約 30 種の野菜ジュース
⑤ 基本+トマト缶
☆味の特徴として、調和のとれた味は、正三角形に近づいていき、何かとがった味がある場合は、味のどれかが飛び出た形の三角形となる。
味のバランス(酸味・苦味・苦味の後味)を見ると、トマト缶や野菜ジュースを用いた方が、生野菜を煮出すよりも味のバランスが崩れないことがわかりました。トマト缶や野菜ジュースを用いると、誰でも簡単に味のバランスを調え、料理の味をうまく調和させることができるため、他の素材と組み合わせた料理がしやすいといえるでしょう。
生野菜を入れたサンプルは、苦味が強く、多くの野菜を取り入れようと種類を増やすと、素材によっては、味のバランスを調えるのが難しく、野菜の摂取とおいしさを簡単に両立できないものと考えられます。
野菜ジュースで調理したものは、トマト缶で調理したものより甘味が強い。野菜ジュースの中では多品種の野菜ジュースを使用したものが甘い
[甘味の強さ比較]
また、「甘味」について比較してみると、多品種の野菜ジュースで調理したものが約30種の野菜ジュースや、トマト缶で調理したものよりも、甘味が強い傾向が見られました。
「多品種の野菜ジュース」で作った料理は甘味が強くなるので、甘味を引き出すために長時間煮込む必要も無く、時短にもつながると推測されます。
「多品種の野菜ジュース」はそのまま飲んでもおいしいが、「出汁」のようにも活用できる
家庭でよく用いられているトマト缶では、甘味というおいしさの土台となる味が不足しがちになることが想定され、これをカバーするために、旨味となる要素(例えば、コンソメなどの旨味調味料)を加えることや、味のボディー感を増すために、塩をより多く入れるなどして、味を調えているものと思います。
このように、素材の味が不足している状態で、味を調える行為をすると、濃い味を嗜好したり、塩分過多など日々の健康に影響したりすることも考えられます。「素材の味を生かす」ことを考えながら、「調和の取れた味」を作ることが、おいしさと健康を両立するために求められる考え方といえるでしょう。
その点では、元々味のバランスの取れた「野菜ジュース」は、そのまま飲むだけでなく、多くの野菜を摂りたいというニーズをかなえながら、色々な料理のベースとなる「出汁」のようにも活用できると考えます。特に多品種の野菜ジュースのバランスのよさは特筆すべき特徴です。
日本人のおいしさの根幹は「調和の取れた味」であり、素材の旨味を引き出した「出汁」にこそ、おいしさと安心感を得られます。食事が洋食化する中で、「かつお節」や「昆布」といった和食の出汁を用いる機会が減っている一方、洋食の中での「出汁」に該当する部分として、手間も時間もかかり、苦味も出がちな野菜を煮出すのではなく、「野菜ジュース」、特に多品種の野菜ジュースを用いて調味を行うことは、多くの野菜も摂れて時短にもなる、合理的な方法と考えられます。
今後も、弊社では、消費者のトレンドにおけるおいしさの理由を、味覚センサーなど数値化手法を用いて明らかにしてまいります。
測定機器について
味覚センサーは、人間の舌を模倣した「人工脂質膜」を用いて、対象サンプルと基準との間の電位差を味の強弱に変換して表現する味覚センサーです。
【測定実施機器:TS-5000Z (株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー社製)(技術:九州大学大学院都甲研究室)】
菅 慎太郎(かん しんたろう)
味香り戦略研究所 味覚コンサルタント/口福ラボ 代表
1977年埼玉県生まれ 早稲田大学社会科学部卒業。
「おいしさ」の表現を企画する口福ラボを主宰し、味香り戦 略研究所では「味覚参謀(フェロー)」としてマーケット分析、商品開発を手がける。大学での講義や地方での商品 開発や地域特産物の発掘、ブランド化を手がける。日本味育協会認定講師。
味香り戦略研究所について
味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】
本件に関する報道関係者 お問合せ先
株式会社味香り戦略研究所 早坂
TEL 03-5542-3850 / FAX 03-5542-3853