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自主研究

個人の“おいしい”が事前予想可能に!
「おいしさ」って何?個人の食の好みのデータ化に成功

味香り戦略研究所(東京都中央区)では味覚センサーを用い、これまでに10万アイテムを超える食品の味を数値化し、食品の開発やマーケティングに活用してきた。ただし、測定したものの「おいしさ」については、個人の感覚であるため判断することは難しかった。しかしこの度、個人の嗜好パターンを確立した事により、味データと嗜好パターンを基にした「消費者にとってのおいしさ」を判定する事が可能になった。


サマリー

■商品開発も数値で証明。個人のおいしさの感覚をデータ化!

  • 10万アイテムを超える味データを基にした調査ツールから、個人の嗜好を特定し、約30パターンに分類。

■「味データ×嗜好パターン」で消費者の“おいしい”が予想できる。

  • 味データに嗜好パターンを掛け合わせることによって、これまではわからなかった消費者の好みを、判定することに成功した。

味覚センサーを用いた分析例として、図1に市販の缶入りレモンサワーを測定した結果を示す。これは各商品の苦味と酸味のバランスを示したもので、「グラフ右下に位置する商品は酸味が強く苦味の抑えられた爽やかな味、左上は酸味が抑えられしっかりと苦味のある味」と言うことができる。しかし、どれがおいしいのか?と問われれば、「それは飲む人の好み」としか答えられないのが現状であった。

【図1】味覚センサー測定結果(苦味と酸味のバランス)

食の好みのデータ化

おいしい、おいしくないを決定づけるのは食べる人の嗜好であるため、弊社ではまず個人の嗜好を特定することを試みた。これまでに蓄積した10万を超える各種食品の味データを基に、食の好みに関する調査ツールを作成した。この調査ツールをベースに2000人規模のリサーチを行い、日本人の平均的な嗜好を割り出し、「消費者一人一人が世間一般と比較してどんな味を好むか」を判定した。ここで得られた結果は、調査の中で「あなたはどんな味が好きですか」の質問から得られた回答者が自覚している嗜好とは異なる結果も多くみられ、無意識下での嗜好を引き出すことが可能となった。更にリサーチから得られた嗜好バランスを統計的に類型化することで、嗜好を約30パターンに分類した。

分類した約30パターンの中から図2に2つのパターンを例示する。パターンAの人は苦味や酸味の強い味を好み、甘味をそれほど好まない傾向がある。逆にBパターンの人は甘味やうま味の強い物を好み、苦味を好まない傾向があると考えられる。

【図2】嗜好のバランス

ここで、パターンAは中高年男性に特徴的な嗜好で、20代以下の若者や女性ではほぼ見られなかった。逆にパターンBは若い世代や女性に比較的多く発現するパターンであった。このように世代による嗜好の傾向から、食品カテゴリー別に「若者に受ける味」等を推定する事も可能だと考えられる。

「味データ×嗜好パターン」から、消費者のおいしいを予測

個人の嗜好パターンがわかれば、個人がおいしいと感じる食品を特定することも可能だと考えられる。食品の味については味覚センサーの測定結果を使用した。図1で分析したレモンサワーのうち、8と9について詳細な味のバランスを図3に例示する。

【図3】レモンサワーの味バランス

商品8はしっかりとした苦味があり甘さを抑えた味わいが特徴であり、逆に商品9は甘味があり苦味を抑えた味わいであった。この2商品と嗜好パターンを掛け合わせると、それらの特徴の一致からパターンAに分類される人は商品8を、パターンBの人は商品9を好むと予想できる。

次に、嗜好判定から予想した商品と、実際に飲食しておいしいと感じる商品の整合性を検証するため、実証実験を行った。
事前に、嗜好判定により各パネラーの好みの商品を1つまたは2つ予想した。次にブラインドで10品を試食し、好きな味の商品を最大3つまで選択してもらった。図4がレモンサワーおよび、果汁飲料にて検証を行った結果で、〇が予想と官能が一致した部分になる。今回の検証ではレモンサワーで8割、果汁飲料は7割のパネラーで1品以上の合致が確認できた。更にその他の食品でも同様の検証を実施し、その際には弊社が蓄積している味データベースより導いた食品ごとの係数を設定する事で、いずれも7割以上が合致する結果となった。この結果から、弊社が確立した嗜好判定により個人の好む味を予測することが可能だと考えられる。

【図4】嗜好予想と官能評価の結果

今後の可能性

消費者が商品選択を行う際には、味わい以外にメーカー・商品名などのブランドイメージから選ばれるケースが想定される。しかし、本ツールではベーシックな個人の嗜好を商品開発・ブランディングに資する情報として活用する可能性について検証した。現時点で2000人以上の嗜好データを収集しており、世代や性別ごとに嗜好の傾向や特徴が取得できている。嗜好パターンの出現割合を利用して嗜好判定を行えば、実際には困難である試食を伴った大規模な嗜好調査を仮想することも可能になると考えている。

また、実際の官能評価を行う場合でも、パネラーの嗜好パターンを事前に把握しておくことで、消費者の実態やギャップを捉えることにつながるだろう。商品開発においても「関東在住30代女性の好む味」の様に、ターゲットを絞った味づくりを行うことも可能である。更に消費者としては、自分の好みの商品を店頭やインターネット上で知り購入することや、レシピサイトから自分好みの味わいを探すことなどができるようになるだろう。
この他にもさまざまなシーンでの利用が想定され、多様化する消費者ニーズに合わせた対応をしていく鍵として、この嗜好データが一助となると考えている。

味香り戦略研究所について

味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】

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株式会社味香り戦略研究所 峰吉
TEL 03-5542-3850 / FAX 03-5542-3853