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自主研究

感性データから植物性代替食品の「今」をみる!
動物性との違いで見える価値とは

12万品を超える味覚データベースを基にフードデジタルソリューション事業を展開する株式会社 味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳 道啓)は、弊社保有の味覚データや食感分析値から、植物性代替食品の特徴を動物性食品との比較で検証しました。


サマリー

■ 植物性ミルクは、継続飲用に向いている

植物性ミルクは、先味のうまみの強さと後味のすっきりさが特徴であり、日々の食習慣に取り入れやすい商品だと考えられる。

■大豆ミートは、複雑な味わいと食感のバランスがポイント

大豆ミートは植物由来の味による複雑さはあるが、食感とのバランスによりこの複雑さが軽減される可能性がある。

■植物性食品の特徴をどう価値化するか

植物性ミルクは、味わいの多様性が商品選択の幅を広げる。
大豆ミートは、コクの要素である複雑味を消しすぎないことが味わいの価値に繋がる可能性がある。


近年欧米(特に米国)では植物性代替肉の市場拡大が目覚ましい。農林水産省食料産業局の調査によると、この背景には欧米人の肥満軽減や生活習慣病の抑制といった健康志向、人口増加と環境問題意識の高まり、動物愛護などに加え、代替肉自体の味の改良も要因になっているようだ。日本においても、昨年から今年にかけて大手企業の参入が相次いだことで、小売店舗でこれらの商品を目にする機会が多くなった。

また、代替食品は肉だけでなく、米粉による小麦の代用や植物性ミルクによる乳製品の代用など多岐にわたり、もはや特別なものではなくなっている。小売店では牛乳の隣に豆乳が陳列され、カフェチェーン店でも豆乳を使用するソイラテは定番化した。また、数年前に第3のミルクとして注目を集めたアーモンドミルクも今では売場に定着し、最近ではオーツミルクなどの新たな植物性ミルクが注目されている。

今後、市場拡大が見込まれるこの分野の商品にはどのような特徴があるのか、またその特徴からみえる価値について、味や食感といった感覚的な視点から検証を行った。

植物性ミルクの特徴

牛乳(8商品の平均値)を基準とし、豆乳(11商品)、アーモンドミルク(5商品)、ライスミルク(5商品)それぞれの平均値に、オーツ(オーツ麦)ミルクとヘンプ(麻の実)ミルクを加え、比較した。図1には、植物性ミルクの特徴的な味わいだと考えられる『うまみの先味と後味』のバランスを示し、図2と図3には植物原料で作られた加工食品の例として、今年3月に発売された『植物生まれのプッチンプリン(江崎グリコ株株式会社)』と『野菜生活100 Smoothieとうもろこしのソイポタージュ(カゴメ株式会社)』の味バランスを示した。
※ 1.0の差が濃度差約20%(大多数の人が異なる味わいと感じる濃度差)である。
※ 図2の基準は、プッチンプリン(江崎グリコ株式会社)とした。
※ 図3の基準は、冷製コーンスープ8商品の平均値とした。

【図1】「植物性ミルク」 うまみの先味と後味(余韻)
【図2】「植物生まれのプッチンプリン」 味バランス
【図3】「ソイポタージュ」 味バランス

植物性ミルクは牛乳より先味のうまみが強く、後味はすっきりしてた。しっかりとした先味は味の印象付けに繋がり、すっきりとした後味は継続飲用に繋がると考えられる。ゆえに、一度気に入れば日々の食習慣に取り入れやすい商品といえるだろう。

大豆ミートの特徴(味・食感)

図3と図4には、動物性食品を基準とした植物性食品の味バランスを示した。
※チキンナゲット(3商品)、大豆ナゲット(2商品)、大豆ミート素材(2商品)は、それぞれの平均値を用いた。
※食感分析のレーダーチャートは標準化データを使用した。

【図4】大豆ナゲットの味バランス
図5】大豆ミート(素材)の味バランス
【図6】大豆ナゲットの食感バランス
【図7】大豆ミート(素材)の食感バランス

図4・5の結果から、大豆ミートの特徴は植物由来の複雑な味わいだと考えられる。味と食感を総合的にみると、複雑味が先味・後味共に強い大豆ナゲットは、柔らかく歯切れのよい食感で咀嚼回数を減らし、口中の滞留時間が短くなることで複雑な味わいが軽減している可能性がある。一方大豆ミート(素材)は、しっかりとした強めの食感が特徴であり、噛む程にじわじわと味わいが溶出し、後味の印象が強い設計だとも考えられる。このような味と食感のバランスが、マスキング原料を使用せずとも大豆臭や複雑味の軽減に一役買うかもしれない。

植物性食品の特徴をどう価値化するか

植物性ミルクは味わいに多様性があるため、食シーン(朝・昼・夜・寝る前・間食など)や気分に合わせた商品選択により、飽きずに継続飲用ができると考えられる。この味の多様性こそが価値であり、牛乳の代替品という印象は薄れていくのではないだろうか。

大豆ミートは、味と食感のバランスにより、大豆由来の複雑な味やにおいの軽減につながる可能性がある。しかし、複雑な味わいはコクの要素でもあるため、消しすぎないことが味わいの価値に繋がると考えられる。

植物性ミルクは牛乳の代替という位置づけもあるが、独自市場が形成されていると感じた。一方大豆ミートは、同カテゴリーの動物性食品にいかに似せるかという事を前提とした商品がほとんどであり、商品名や商品説明にも肉に似ている旨の記載がされていることが多い。一口に代替食品といっても、その開発背景や消費者ニーズによりPRの方向性は様々だが、今後は独特の特徴を価値とした表現が商品毎に確立されていくのではないだろうか。

海外では既に植物由来の魚の代用食品も開発されており、近い将来日本にもその流れが訪れるだろう。これらの植物性食品が私たちの食生活にどう根付くのか、今後が楽しみである。

味香り戦略研究所について

味覚センサなどによる食品の味の数値化がコア技術。
2004年9月の設立以来、蓄積した12万アイテムを超える味データなどをデータベース化し、商品開発や品質管理、売場づくりといったコンサルティングを行うほか、独自のノウハウを基に味にまつわるセミナーや講演活動を行い、食品産業の発展に貢献しています。
URL https://www.mikaku.jp/

本件に関する報道関係者 お問合せ先

株式会社味香り戦略研究所 研究開発部 矢嶌(やじま)
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