12万品を超える味覚データベースを基に、「食」を科学する株式会社 味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳 道啓)は、感性工学技術を活用した「味覚センサー」を用いて、各社のミネラルウォーターの味わいと、水が及ぼす料理などへの影響について、味覚分析した。
株式会社 味香り戦略研究所は、世界中の食品の味覚ビッグデータやAI解析技術を駆使し、食品の「味」を数値化する手法で、「味」をわかりやすく表現する次世代のフードテックシンクタンク企業である。
今回、コロナ禍で低迷していたと言われる飲料市場においても、伸長を続けていた「水」に注目。一般社団法人日本ミネラルウォーター協会が発表したミネラルウォーターの1人当り消費量の推移【図1】によると、ミネラルウォーターの消費量は2005年から2021年にかけて約2.5倍となっている。これに伴い、ミネラルウォーター類の国内生産量【図2】も増加傾向であった。多くの人が水を買う時代、その味わいを決める要素は何なのか。水は紅茶やダシの味わいにどれだけ影響するのかを分析・検証した。
味分析結果 サマリー
■ ミネラルウォーターの「飲みごたえ」と「ミネラル感」。採取される「水源地」により、味わいに幅がある。
■ 豊かな水源や土壌、気候がおいしい米を育む。米を選ぶときは銘柄プラス「産地」にも注目を。
■ 水によって変わる、紅茶の味わいと色合い。茶葉感を感じたいなら「軟水」、すっきりとした味わいは「硬水」。
■ 冬の鍋に欠かせないダシ。コクやうま味が際立つ「軟水」、パンチを出したい時は「硬水」が助けに。
各メーカーのミネラルウォーターを味覚分析
国内産でも、「水源地」により味わいに幅がある
バランスの中心値は「サントリー天然水」、しっかりと水の味わいを感じたいなら「伊藤園evian」
【図3】にミネラルウォーターの「飲みごたえ」と「ミネラル感」のバランスを示した。ゼロ点はミネラルウォーター39品の平均値。
飲みごたえとミネラル感は、左下に位置するほど穏やかな傾向にあり、中硬水〜硬水と硬度が上がるにつれて右上に移行し、ミネラル感が強くなる。これらはミネラルウォーターに含まれるカルシウムやマグネシウムの量と相関があり、水が育まれ採取される場所「水源地」に依るところも大きい。例えば、右上に位置するのは主に欧州からの海外輸入品である。ミネラル感が強いほど後味に余韻が残る味わいとなり、さらに飲みごたえとミネラル感の双方が強いと、しっかりと水の味わいが感じられる。
本分析で注目したいのは、国内産でも飲みごたえとミネラル感には幅があるという点である。例えば「ファミリーマート宮崎県霧島の天然水」は国内産でも右上に位置する商品である。また「富士」「富士山」とうたった商品は近い距離に位置する商品が多く、似通った味わいだと考えられた。以上のことからも、水の味わいは産地、いわゆる「水源」がその性質に大きく影響を与えていると推測され、分析の結果からも、味わいに幅があることが示唆された。
図の中心に近いところでは「サントリー天然水」(南アルプス)が位置し、全体の味のバランスが取れた商品だと推測できる。当社は様々な食品を分析しているが、どのカテゴリーにおいてもロングセラー品はグラフ中心に位置する傾向があり、このような商品は広い層に支持されやすい味わいとも言える。一方、伊藤園evianなどは、飲みごたえとミネラル感が強い傾向があり、国内産ミネラルウォーターよりもしっかりと水の味わいが感じられるのではないだろうか。
水源の違いは産品の味に影響するのか。
全国の「コシヒカリ」を味覚分析
米の味わいは「水源×土×気候」=産地によるところが大きいと推測
水の味わいはその水源地の影響が大きいと示唆されたが、その水源によって育まれる酒や米などの産品の味わいにも影響があるのだろうか。当社で保有している「コシヒカリ」の味データベースを基に6種のコシヒカリの味のバランスを検証した。
今回分析したコシヒカリは、大きく3つの味タイプに分類され、大まかに地方ごとの特徴が見出される結果となった。赤色グラフは味わいしっかりタイプ。「コク・厚み」「味の濃さ」「後味」が特徴的で、全体的なグラフのバランスも大きいことから、米らしさをしっかりと感じられる味わいであった。このようなタイプの米は、日本穀物検定協会による特Aランク米など、ランク上位品であることが多い。 黄色グラフは余韻タイプであり「深み」「後味」が強く、味わいの余韻が広がる。青色グラフはまろやかタイプ。「うま味」や「余韻」が特徴的な味わいだと考えられる。
銘柄に注目が集まりやすい米だが、同じ銘柄であっても味わいは異なり、そのタイプは地方ごとに大別される。米の味わいを決める要素はひとつではないが、水源や土壌、気候などが大きく影響し、それらが産地ごとの特徴となって表れているものと考えられる。
見た目にも大きな違い。水を変えて紅茶を味覚分析
“茶葉”感が強いのは軟水、すっきりした味わいは硬水
次に、茶葉や抽出方法は変えずに、水だけを変えて紅茶を淹れた場合、味や見た目にどのような違いがあるか。ミネラル感の違いに着目し、軟水・中硬水・硬水の代表的な5商品をピックアップし、検証した。
左から…サントリー天然水、コカ・コーラい・ろ・は・す天然水、ファミリーマート宮崎県霧島の天然水、伊藤園 evian、contrex(写真下)
軟水「サントリー天然水」(南アルプス)、「い・ろ・は・す天然水」(白州)は、苦味や渋味など茶葉感が強い味わいとクリアで鮮やかな色味が特徴であった。中硬水「ファミリーマート宮崎県霧島の天然水」は、渋味が強く、抽出液はやや濁りが認められた。硬水の2つは硬度の度合いで味が異なり、「evian」はやや雑味のある味わい、「contrex」は苦味や渋みが少なくやや酸味を感じるすっきりとした味わいであった。この2つは、カップの底が見えないほど濁りが強かった。水の違いは抽出力にも影響し、それらの違いが味や色味にあらわれたと推察される。
軽くほっと一息つきたいときは硬水で抽出して、苦味を軽めにミルクと合わせる、一方、シャキッと目を覚ましたいときは軟水で抽出して茶葉感を強めにするなど、水の特徴を知ることで紅茶の楽しみ方も一層拡がっていくだろう。
冬の鍋に欠かせない、「ダシ」と水の相性を検証
コクやうま味が際立つ軟水、パンチを出したい時は硬水を
冬の定番・鍋に欠かせないダシ。それぞれのダシの良さを最大限引き出す、最適な水はあるのか。昆布、かつお節、煮干しでそれぞれにダシをとり、水の違いによるダシの味わいを検証した。
ダシの種類に関わらず、軟水は全体的に味が控えめでコクやうま味が際立つ味わい、中硬水はバランスの良い味わい、硬水は味の濃さ、うま味の余韻が強くなり、全体的に味に膨らみがでる傾向があった。また、紅茶と同様に硬水になるにつれ、ダシの透明度は低くなった。
《 水とダシの相性を加味した、「水と鍋」のおすすめコンビ 》
軟水はダシが濁ることなく、コクやうま味を引き出すことができるため、色味が重要かつ素材の味わいを楽しむ、お雑煮やしゃぶしゃぶなどと相性が良い。
中硬水はバランスよくダシの味わいを抽出することができるため、寄せ鍋やちゃんこ鍋など様々な具材を入れて食す鍋と相性が良いだろう。
硬水は、ダシの味わいを強く引き出すことができるが、ダシが濁ってしまう傾向にある。ダシの色味をそれほど気にせず調味料に負けないパンチのある鍋、キムチ鍋や豆乳鍋に使用するとつゆの味わいに負けずにダシ感を楽しめるだろう。
今回の検証で、鍋の味わいを決める要素に、水とダシの相性も含まれることが示唆された。水とダシの相性と特徴を知ることで、これからの鍋の季節を、よりおいしく、飽きずに楽しむことができるだろう。
まとめ
日常ではその存在が当たり前すぎて、意識される機会が少ない水(ミネラルウォーター)だが、その味わいにはそれぞれ個性のあることがわかった。上記で挙げた以外にも、軟水はダシやスープなど穏やかな味わいの料理に使用することで、素材の味を上手に引き立たせる効果も考えられる。一方で比較的しっかりとした味のミネラルウォーターは、割り材として使用すると一味違ったお酒の味を楽しめることもあるだろう。このように、水の種類と多様性を知ることで、価格や機能性のほかにも料理に与える影響、生活者個人の嗜好といった視点で水選びができるようになるのではないだろうか。また、米や野菜のように産地に注目し、その水が育まれる場所、「水源地」を知るという視点も、これからの水選びには重要な選択肢になると考えている。
味覚分析概要
■ミネラルウォーター味覚分析サンプル
アイリスオーヤマ 富士山の天然水
アサヒ飲料 アサヒおいしい水天然水富士山
伊藤園 evian
エスオーシー 温泉水99
大塚食品 クリスタルガイザー
コカ・コーラ い・ろ・は・す天然水(白州)
contrex
サントリー 天然水(南アルプス)
シリウス 北アルプス安曇野の清らかな天然水
セブン&アイ セブンプレミアムアルカリ天然水
セブン&アイ セブンプレミアム天然水
ナチュラルローソン ナチュラルウォーター
ファミリーマート 宮崎県霧島の天然水
富士ミネラルウォーター 富士ミネラルウォーター
ローソン 天然水
■紅茶の抽出方法
茶葉3gに沸騰させたミネラルウォーター200gを加え、3分静置した。静置後、不織布で茶葉をろ過し常温になったろ液を測定した。
■出汁の抽出方法
《 昆布 》昆布15gに500gのミネラルウォーターを加え30分静置。IH中火で加熱し、煮立つ直前に火を止めてろ過。常温になったろ液を測定した。
《 かつお 》削り節8gに沸騰させたミネラルウォーター200gを加え、IH強火で1分加熱後、3分静置。ろ過後に削り節を絞り200gに補水したものを測定した。
《 煮干し 》頭とはらわたを除去した煮干し15gとミネラルウォーター500gを小鍋に入れ、IH強火で加熱し、沸騰後は中火におとし10分加熱。加熱で失った分の水分を補水し、ろ過後常温になったろ液を測定した。
味香り戦略研究所について
「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所では、味・香り・食感等の「おいしさ」の可視化技術を活用し、10万件を超える食品の味覚データベースを構築。これを基にフードデジタルソリューションサービス、具体的にはパーソナライズド食品の開発や海外マーケットに向けての味のカスタマイズ、味覚と健康に関するコンサルテーション等を提供しています。
【URL https://www.mikaku.jp/】
会社概要
会社名:株式会社 味香り戦略研究所
本社所在地:〒104-0033 東京都中央区新川1-17-24 NMF茅場町ビル8F
代表者名:小柳 道啓
設立年:2004年9月
事業内容:フードデジタルソリューション事業
本件に関する報道関係者 お問合せ先
株式会社味香り戦略研究所 広報事務局 (森下・清宮)
TEL 03-3407-5780 / MAIL press@epochseed.jp