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自主研究

味を数値化する味覚センサでペットボトル入り緑茶飲料のトレンドを調査
“濃い味”ニーズは上昇傾向

「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳道啓、以下「味香り戦略研究所」)は、ペットボトル入り緑茶飲料18商品を味分析し、そのデータから味のトレンドを調査した。味香り戦略研究所は、味・香り・食感を分析・数値化し、おいしさの見える化に取り組んでおり、12万件超の味覚データベースを独自に構築し、データを基に食産業を支援するフードテックシンクタンク企業である。


サマリー
〇金額PI値-「濃い飲料」の金額PI値が上昇していた。
〇「濃い飲料」の味-渋味やボディ感が強く、近年はこのような味わいが好まれていると示唆された。
〇「濃い飲料」は男性が好む傾向がみられた。


ペットボトル入り緑茶飲料は「定番品※1」の他に、「濃い飲料」、「特定保健用食品」、「機能性表示食品」等、様々な商品が展開されている。その中でも、「濃い飲料」のニーズは上昇傾向にある(図1)。

【図1】年別金額PI値

私たちの食卓に身近な緑茶飲料にもトレンドはあるのだろうか。
今回は、現在販売されている緑茶飲料の味わいと、「定番品」、「濃い飲料」における味わいの変化を調査した。

味データから読み解く緑茶飲料の味トレンド

18商品※2のペットボトル緑茶飲料の味わいの分布を図2に示した。「定番品」および「機能性表示食品」は、図の中心に近いところに位置する傾向があり、「濃い飲料」は、渋みとボディ感が強い濃厚な味わいであった。

【図2】2023年に販売されている緑茶飲料の味わいの分布

生茶は「濃い飲料」として、濃い生茶が2006年に限定的に販売されていた。お~いお茶、伊右衛門、綾鷹の「濃い飲料」は「機能性表示食品」に移行しており1-3)、その味わいは変化していると考えられる。そこで、2006年と「機能性表示食品」になる前の2018年と現在2023年の8商品の味データから各年の味わいを導き、その変化を比較した(図3)。

【図3】定番品と濃い飲料の味バランス

雑味を除いて、「濃い飲料」の方が全体的に強い味わいとなっていた。「定番品」の2023年では、渋味、ボディ感、渋味の余韻は控えめな味になっていた。しかし、雑味は強くなっている傾向であった。「濃い飲料」では、2023年になるにつれ渋味と渋味の余韻が強くなっている。これは、「機能性表示食品」に移行した際に、抹茶を増量3)したことが理由の一つと考えられた。

「濃い飲料」の金額PI値が上昇していること(図1)や、味データからも、ボディ感や渋味の強い濃い味わいのニーズが高まっていると考えられた。

渋味の強い味を好む購買層の予測

渋味の強い味を好む購買層を検討するため、性年代別の「濃い飲料」の金額PI値と嗜好性を比較した。嗜好性は、味香り戦略研究所が全国7,500人以上を対象に実施した味の嗜好に関するアンケート調査を使い、12万アイテムを超える食品の味データベースを基に開発した独自の嗜好性診断ロジックによって得られた、性別・年代・地域別の好まれる味のデータを使用した4)

金額PI値の高い、お~いお茶濃い茶と伊右衛門濃い味では、70代を除いた男性の金額PI値が高かった(図4)。理由として、男性の年代別の嗜好性を見ると(図5)、70代だけではなく、どの年代でも異なる特徴を示しており、「濃い飲料」の金額PI値(図1)が上昇しているのは、味もさることながら、背景には健康への意識の高まりも影響していると考えられる。近年の「濃い飲料」は体脂肪を減らす効果の「機能性表示食品」として販売されており、勤労世代の20〜60代では、コロナ禍による生活様式の変化に伴い、運動不足等の意識から、このような結果になったのではないかと考えられた。そして、女性よりも男性の方が「濃い飲料」の金額PI値が高かった理由としては、男性の方が苦味や濃い味への嗜好性が強く表れたためではないかと考えられた(図6)。

【図4】2022年の性年代別金額PI値
【図5】男性の年代別嗜好性
【図6】性別嗜好性

まとめ

今回、ペットボトル緑茶飲料の味を数値化し、トレンドを調査した。現在、「濃い飲料」の金額PI値が上昇傾向であることから(図1)、コロナ禍の生活様式の変化によって機能性表示食品である「濃い飲料」が売れていると考えられた。他にも、コロナ禍での変化で考えられることとして、一般的な食品でも濃い味付けの商品が展開されるようになっており、緑茶では渋味を強くした商品のニーズが高まったのではないかと考えられた(図1〜3)。このように、現在は濃い味が人気であるが、時代背景によって好まれる味わいは変化することが示唆された。ペットボトル入り緑茶飲料は多くの新商品が開発され続けており、今後もペットボトル入り緑茶飲料のトレンド変化に注目していきたい。


※1 濃い飲料、特定保健用食品、機能性表示食品、デカフェ以外の商品

※2 【味覚分析概要】2023年に販売されているペットボトル入り緑茶飲料

※3 【味覚分析概要】主要ペットボトル入り緑茶飲料の測定年

1) 株式会社伊藤園,機能性表示食品「お~いお茶 濃い茶」8月5日(月)より販売開始,2019.
2) サントリー,あの“濃い味”が、茶カテキンの力で内臓脂肪を減らす機能性表示食品に!,2022.
3) 日本コカ・コーラ株式会社,「綾鷹濃い緑茶」が機能性表示食品になって新登場,2023.
4)株式会社味香り戦略研究所,嗜好性診断プログラムで地方の“おいしい”が明らかに!~年代・地域ごとの好みの味を徹底検証~,2023

味香り戦略研究所について

「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所では、味・香り・食感等の「おいしさ」の可視化技術を活用し、相対評価で捉えられていた感性数値を客観化して、評価基準、尺度としての活用を可能にしました。設立以来、食品のデータ化を続け、現在では12万件を超える食品の味覚データベースを構築しています。これを基に、食品の開発や品質管理、市場調査、海外マーケットに向けた味のカスタマイズ等、食にまつわるさまざまな課題にデータを活用するフードデジタルソリューションサービスを提供しています。

【会社概要】
株式会社 味香り戦略研究所【https://mikaku.jp/】
本社所在地:東京都中央区新川1-17-24 NMF茅場町ビル8F
代表取締役社長:小柳 道啓
設立年:2004年9月
事業内容:フードデジタルソリューション事業

本件に関する問い合わせ

株式会社味香り戦略研究所 研究開発本部 研究開発部
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