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自主研究

時系列官能評価による連食性の評価・数値化手法を開発
飲み物とのペアリング相性評価、リフレッシュ効果の評価も可能に

「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳道啓、以下「味香り戦略研究所」)は、このたび、時系列官能評価を用いて食品の連食性を評価・数値化する手法を開発しました。この研究は、食品単体および飲み物の組み合わせが連食性行動に与える影響を可視化し、製品のおいしさ評価の手法を探求するものです。

連食性とはいわば「止まらないおいしさ」、次々と食べたくなるという感覚であり、時間の要素も含まれることから、客観的な評価をするため時系列官能評価(Time Intensity:時間強度、TI法)を用い、喫食時のおいしさの複合的な感覚を「快・心地よさ」と定義し、その変化を観測し続けることで連食性評価のパターンを見出しました。

サマリー
〇時系列官能評価を用いて、連食性を評価する手法を開発した。
〇ポテトチップス通常品と濃い味では、通常品の方が連食性が高い。
〇連食性評価手法の研究を深めていくことで、食べ物と飲み物のペアリング評価、飲み物による味のリフレッシュ効果の評価を可能に。

■連食性とは

食品の連食性とは、ある食べ物を繰り返し摂取する傾向を指し、味香り戦略研究所では以下の1~6要素で構成されることを仮説としています。

  1. 嗜好性(Preference)
    その食べ物がどれほど好まれるか、個人の好みに基づく評価であり、味、香り、食感、見た目などに影響される。
  2. 摂取頻度(Frequency of Consumption)
    一定期間内にその食べ物がどれくらいの頻度で摂取されるかを示し、短期間での繰り返し摂取の回数が多いほど連食性が高いとする。
  3. 摂取量(Amount of Consumption)
    一回の食事での摂取量の増減を指し、摂取量が増える場合、連食性が高いとする。
  4. 満足感(Satisfaction)
    食後の満足度や満腹感を評価し、満足度が高い場合、連食性が低下する可能性がある。
  5. 依存性(Dependence)
    その食品に対する依存的な摂取行動の有無を評価し、依存性が高い場合、連食性も高くなる可能性がある。
  6. 嗜好の変動(Variability of Preference)
    時間の経過や状況による嗜好の変動を評価し、安定した嗜好が維持される場合、連食性が高いとする。

これらを前提に、特に食事のときは1~5をそれぞれ体感・判断し、連食性行動を起こしていると考えられます。また、実際の連食行動は複雑で、食べ物と飲み物の摂取を繰り返し、それは口内リフレッシュやペアリングとして表現されます。

実験内容・結果

ポテトチップスの味の濃さの違いによる連食性評価

時系列官能評価の手法の1つであるTI法を用い、
「ポテトチップスを4口食べ、「水」でリフレッシュを行い、ポテトチップスを1口食べる」
という一連の流れを「快・心地よさ」を評価軸に用いて経時記録し、
そのときの4つのイベント「1口目」「2口~4口目」「リフレッシュ」「5口目」を設け、それぞれの評価値を比較した。

評価したポテトチップスは「通常品」と、そのシーズニングが強くなっている「濃い味」を用い、水は常温の純水を用いた。

実験の結果をモデル化した図を[図1]に示しました。

[図1]ポテトチップスの味の濃さの違いによる連食性評価のモデル図
[図1]ポテトチップスの味の濃さの違いによる連食性評価のモデル図

1口目は、通常品より濃い味のポテトチップスの方が上昇し、味のインパクトの差が見られました。その後、連続的に摂取する2口目〜4口目では、変化のパターンに違いが見られました。また、水でリフレッシュすることで5口目の快・心地よさはいずれも回復しました。

実験の結果から、通常品の「だんだんと快が増していく」パターンは連食性が高い、濃い味の「快のピークがすぐに来て、変化が少ない、または減少する」パターンは連食性が低いと考えられます。(図2)

この手法は、今までにない「連食性評価」として活用できると考えています。

[図2]実験結果から考えられる連食性評価のパターン
[図2]実験結果から考えられる連食性評価のパターン

今後の展望

これまで、連食性は主に経験によって曖昧な共通認識を形成する食のおいしさ表現のひとつとなっていましたが、今回、すでに確立されている官能評価手法(TI法)を活用し連食性評価のパターンを見出したことで、客観的な連食性の評価・数値化を実現し、味香り戦略研究所の新たな分析サービスとして提供いたします。

また、実験では水を用いましたが、食べ物と組み合わせる飲み物を変えることで生じる変化を観測した結果から、味香り戦略研究所では、この評価手法はフードペアリングの相性評価や、飲み物による味のリフレッシュ効果の評価も可能にすると考えており、ポテトチップスに対する水・コーラの比較試験も行いました。(図3)

[図3]TI曲線の各極大点を抽出した時の快・心地よさの推移
[図3]TI曲線の各極大点を抽出した時の快・心地よさの推移

図の結果から、水とコーラのリフレッシュ効果およびペアリング相性が推察できます。
ポテトチップスおよびコーラは味覚順応が起こりやすい味質(塩味・甘味・うま味)と味濃度であるため、さらに摂取を繰り返すことでより明らかな連食性の低下につながることも考えられます。また、この結果から、ポテトチップスと味の要素が異なる渋み・苦味が中心となった飲み物、例えば茶やビールを用いることでどのように結果が変わるのか研究を続け、フードペアリングの相性評価、並びに飲み物による味のリフレッシュ効果を明らかにするなど、味香り戦略研究所は食にまつわるデータソリューションを提供するフードコンサルティング企業として、新たな味わい評価・数値化手法の開発を続けてまいります。

味香り戦略研究所について

「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所では、味・香り・食感等の「おいしさ」の可視化技術を活用し、相対評価で捉えられていた感性数値を客観化して、評価基準、尺度としての活用を可能にしました。設立以来、食品のデータ化を続け、現在では12万件を超える食品の味覚データベースを構築しています。これを基に、食品の開発や品質管理、市場調査、海外マーケットに向けた味のカスタマイズ等、食にまつわるさまざまな課題にデータを活用するフードデジタルソリューションサービスを提供しています。

【会社概要】
株式会社 味香り戦略研究所【https://mikaku.jp/】
本社所在地:東京都中央区新川1-17-24 NMF茅場町ビル8F
代表取締役社長:小柳 道啓
設立年:2004年9月
事業内容:フードデジタルソリューション事業

本件に関する問い合わせ先

味香り戦略研究所 コンサルティング事業部(担当:髙橋(貴))
TEL 03-5542-3850 / お問い合わせフォーム