「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳道啓、以下「味香り戦略研究所」)は、味覚センサで測定した常温データから、異なる温度帯での味わいを推定する独自手法について、新たにアイス、ビールを対象とした推定式を構築しました。
味香り戦略研究所では、味覚センサ測定およびデータ活用の知見を生かし、温度帯別の味わい推定手法の開発に取り組んでおり、2025年5月には第1弾として日本酒、コーヒー、めんつゆの3カテゴリについて調査結果を発表しています1)。今回は第2弾として、アイス、ビールへ対象を拡大しました。
今回新たに対象に加わった2カテゴリは夏季の販促・店頭訴求との親和性が高く、冷たさそのものだけでなく、溶け始めや温度変化によって感じられる味わいの印象が変わりやすいカテゴリです。一方で、販促の現場では「冷やしておいしい」といった表現にとどまりやすく、温度による味の違いを客観的な根拠をもって伝える手法は限られていました。
本技術によって、温度によって変化する味わいを可視化し、商品開発時の味わい設計や評価に加え、販売促進や消費者への情報発信にも活用しやすいデータとして提供することが可能になります。なお、本技術は特許出願済みです。
サマリー
●アイスでは温度上昇に伴って甘味やまろやかさが高まり、ビールでは温度帯によってキレやコクの感じられ方が変化することが、温度帯別味覚データとして把握できるようになりました。
●温度帯別味覚データを活用することで、商品開発時の味わい設計や評価に加えて、販売促進や消費者への情報発信において、温度による味わいの違いをより具体的に伝えることが可能になります。
高温化が進む夏、差別化の鍵は“温度で伝える味わい”
近年、夏の高温化を背景に、顕著な高温への社会的関心は一段と高まっています。こうした中、気象庁は4月、最高気温40℃以上の日を表す新たな予報用語として「酷暑日」を定めることを決定しました2)。食産業の現場では、ビールを筆頭に「冷たさ」をアピールするプロモーションが実施され、食品メーカーでは新たに「冷やし茶漬け」やお味噌汁・お汁粉といった、従来は温かい状態で喫食されていたメニューにおける「冷やし」提案が発信されています。さらに、消費者の食選択では、猛暑下においては氷菓を中心とした冷涼感のある商品の需要が伸長するなどの変化が見られます3)。
味覚センサにおける温度別測定の課題
従来、温度による味わいの違いを確認するには、試料の温度を調整したうえで個別に測定する必要があり、味覚センサの運用負荷やデータ取得の工数が課題となっていました。今回、アイス群およびビール群のカテゴリ別推定式を構築したことで、味覚センサで取得した常温測定値をもとに、対象カテゴリにおける喫食温度帯の味わい傾向を効率的に把握できるようになりました。
加えて、前回は液体食品を中心に検証していましたが、今回アイスを対象としたことで、固形物や前処理を要する試料においても、本手法を適用できる可能性が示唆されました。これにより、常温での測定結果をもとに、実際に食べる温度帯での味わいを見据えた評価や設計へと活用できる可能性が広がります。
試験設計
本試験では、味覚センサの常温測定で、各温度帯の味わいを推定できるようにすることを目的としました。試験サンプルは、温度による味わいの変化が喫食・飲用体験に影響すると考えられるアイスおよびビールの2種類としました。
〈測定方法〉
〇味覚センサ(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製 TS-5000Z)
サンプル(付表1)を対象に、各温度帯における味わいの変化を整理しました。アイスでは、家庭用冷凍庫の温度である-18℃、食べごろとされる-8℃4)、味覚感知域である10℃、センサ実測値である25℃を中心に評価し、口中での変化も想定しました。ビールでは、冷却した状態として-2℃、一般的な飲用温度として6℃、高めの提供温度として13℃を比較しました。
〇官能評価
推定式の妥当性確認を目的として、官能評価を実施しました。評価はSD法、評価者数は6名とし、アイスは明治 エッセル スーパーカップ 超バニラ、ビールはキリン 一番搾り生ビールを対象としました。評価温度は常温(20℃程度)および冷蔵庫温度(3℃程度)です。
温度帯別味覚データによるアイスとビールの味わい整理


味覚センサによる実測値を踏まえて味わいの変化を整理した結果、アイスでは温度が高くなるほど甘味やクリーミーさ、まろやかさ、余韻が強まり、低温ではすっきり感が際立つことが示されました。ビールでは、温度が高くなるほど苦味やまろやかさが強まり、コクのある苦味を感じやすくなる一方、低温ではキレのあるすっきりとした味わいが際立つ傾向がみられます。こうした変化の傾向をもとに、常温で取得した測定値から、対象カテゴリの温度帯別の味わいを推定できるようになりました。
なお、今回開発した推定式による温度帯別の味データの推定結果については、官能評価による検証を行い、味の変化がおおむね同様の傾向を示したことを確認しています。
温度帯別味覚データの活用方法
温度によって変化する味わいを数値化することで、商品開発時の味わい設計や評価に加え、販売促進等のプロモーション施策や消費者への情報発信にも活用でき、科学的な根拠をもった訴求が可能になります。
アイスでは、温度変化に伴う味わいの違いが銘柄ごとにわかりやすく、伝えやすくなります。実際に食べる温度帯での味わい傾向を踏まえることで、目指す味わいの設計や評価に役立つほか、温度上昇による濃厚感やまろやかさの変化、低温時のすっきりとした味わいを可視化することで、季節や喫食シーンに応じた商品訴求にもつなげられます。
ビールでは、温度帯別の味わいマップを用いることで、流通・小売業や外食企業に向けた売場提案、提供温度の設計、商品訴求の戦略に展開しやすくなります。たとえば、低温帯ではシャープなキレを、やや高めの温度帯ではコクや苦味の広がりを訴求するといった整理が可能となり、商品特性に応じた提案活動や情報発信にも活用できます。
さらに、銘柄ごとの特徴を消費者に伝わりやすい形で表現することで、従来にない消費者向けアウトプットとしての展開も期待されます【図3】。

また、こうした温度帯別味覚データは、嗜好性やフードペアリングに関する味香り戦略研究所の知見と組み合わせることで、より立体的な商品提案や消費者コミュニケーション設計にもつながります。
近年、40℃を超える暑さが珍しくなくなる中で、「冷たさ」を軸にした商品が増え、食市場では「冷やし」の価値が広がりつつあります。商品点数の増加に伴って市場が広がる一方、「冷やし」という価値そのものは相対的にコモディティ化していくことも考えられます。こうした市場環境のもとでは、商品の価値を単に「冷たいからおいしい」と伝えるのではなく、「その温度でどのような味わいが感じられるか」まで含めて具体的に示すことが、販促上の差別化につながります。
本技術を活用することで、ひとつの商品について、温度帯や食べ方の違いに応じた複数の魅力を伝えることが可能になります。商品そのものをリニューアルすることなく、食べる温度や提供の仕方によって新たな価値を訴求できる点も特長です。特に、アイスのような商品では、食べ始めから食べ終わりにかけての時間経過に伴う温度変化によって、味わいの移り変わりそのものを楽しめることも、消費者への新たな提案につながります。
温度帯別味覚データは、食品・飲料メーカー、流通・小売業、外食業において、商品開発時の味わい設計や評価に加え、温度帯ごとの根拠を持った販促表現、提供提案、味わいコミュニケーションを支援します。今後は、惣菜や炊飯米などの固形物への適用可能性や、香り・食感における温度差の影響についても検討を進めながら、開発・評価から販促・商品訴求まで活用しやすい温度帯別味覚データとしての展開を進めてまいります。
参考
1)味香り戦略研究所「味覚センサ常温測定値から各温度帯の味わい変化の推定手法を新たに開発 日本酒・コーヒー・めんつゆの推定式を構築し、常温測定で異なる温度帯の味わいの推定が可能に」(2025年5月20日)
https://mikaku.jp/news/2025/11028/
2)気象庁「最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日」に決定」(2026年4月17日発表)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/17a/40degree_name.html
3)株式会社インテージ 「知るギャラリー」2025年11月18日公開記事
「猛暑で消費行動はどう変化した? インテージが読み解く2025年夏 ~食品市場編~」
https://gallery.intage.co.jp/mousho2025_2/
4)一般社団法人日本アイスクリーム協会「アイスクリーム、ソフトクリーム、ジェラートの違いって、何?」
https://www.icecream.or.jp/iceworld/qa/10.html
味香り戦略研究所について
「食」を科学する味香り戦略研究所は、味・香り・食感等の「おいしさ」の見える化をコア技術に持つソリューション提供企業です。15万件超の味覚データベースを構築し、それを基に独自の嗜好性診断アルゴリズム(特許第7448274号)、フードペアリングロジック(特許第7398855号)を開発。食品開発・マーケティング支援など、食にまつわるさまざまな課題に対応するフードデジタルソリューションを提供し、パーソナライズド提案技術の社会実装にも積極的に取り組んでいます。
【会社概要】
株式会社 味香り戦略研究所【https://mikaku.jp/】
本社所在地:東京都中央区新川1-17-24 NMF茅場町ビル8F
代表取締役社長:小柳 道啓
設立年:2004年9月
事業内容:フードデジタルソリューション事業
本件に関する問い合わせ先
味香り戦略研究所 コンサルティング事業部
TEL 03-5542-3850 / お問い合わせフォーム
付表1 試験サンプル
アイス
| 明治 | エッセル スーパーカップ 超バニラ |
| ロッテ | 爽 バニラ |
| ハーゲンダッツジャパン | ハーゲンダッツ バニラ |
ビール
| サントリー | ザ・プレミアム・モルツ |
| アサヒビール | アサヒスーパードライ |
| サッポロビール | ヱビスビール |
| キリンビール | 一番搾り生ビール |
| 銀河高原ビール | 小麦のビール |



