
私たちは毎日、当たり前のように食べ、そして「おいしい」と感じています。
では、その「おいしさ」を、どこまで意識して味わっているでしょうか。
甘味、酸味、塩味、苦味、うま味。さらに香りや食感、喉を通るときの感覚まで——。
「おいしい」と感じるとき、私たちはこうした一つひとつの感覚を意識しているわけではありません。
でも、それぞれに意識を向けて味わってみると、いつもの食事の中にも、これまで気づかなかったおいしさを発見できます。
今回、プライベートで「味覚レベルアップ講座」を受講したのは、作家・料理家として幅広く活躍する樋口直哉さんと、食の魅力を多角的に発信するフードアナリストの松本純子さん。
食を仕事にし、日頃から「おいしさ」と向き合っているお二人にも、新しい発見がありました。
講座終了後、その体験について伺いました。
〈樋口直哉さんプロフィール〉
作家・料理家。1981年生まれ。服部栄養専門学校卒業。
2005年『さよならアメリカ』(講談社)で第48回群像新人文学賞を受賞し、作家デビュー。同作は第133回芥川龍之介賞の候補にもなった。料理家としての著書に『新しい料理の教科書』(マガジンハウス)、『料理1日目』(光文社)など多数。「きょうの料理」、「激突メシあがれ」(いずれもNHK)などのメディアにも出演し、調理科学に基づいたわかりやすい解説が人気を博す。
〈松本純子さんプロフィール〉
フードアナリスト。野菜ソムリエプロ
平日は中央省庁に勤務する傍ら、勤務時間外で食や農に関する執筆活動を行う。全国各地の産地や作り手を訪ね、その土地ならではの食や、背景にある人・文化を取材。新聞やWEBメディア、地域メディアなどで多数の執筆・連載を手がける。ごはんソムリエ、もちマイスターの資格をもち、米や餅をはじめ、日本各地の食文化にも詳しい。
2026年4月「マツコの知らない世界 お餅の世界」に出演。
「体験」が入ると、知識が自分のものになる

講座を終えて、樋口さんがまず印象に残ったと話したのは、「うま味を探す」実験でした。
「言葉では知っているけれど、そこに“体験”が入ると、すごく自分のものになった感覚があるんです。」
うま味の相乗効果は、本や授業でも学ぶことができます。
しかし、知識として「知っている」ことと、実際に自分の舌で探し、違いを感じ取ることは同じではありません。
自分で味わい、考え、確かめる。その瞬間、知識が「情報」から「自分の感覚」へと変わっていきます。
樋口さんは、当社主席研究員・髙橋が以前から話していた「味覚はRPGのレベルアップと同じ」という言葉になぞらえて、こんな感想を話してくれました。
「今日ちょっと、2つ分くらいレベルが上がった感じ」。
食のプロであっても、まだ味覚はレベルアップできる。
それこそが、この講座のおもしろさなのかもしれません。
「喉で味わう」。いつもの食事に、まだ知らない感覚があった
松本さんが特に印象に残ったのは、「喉の味わい」を体験する実験でした。
「毎日食べているもの、味わっているものなのに、意外と知らないなと思いました。」
私たちは「味わう」というと、つい舌に意識を向けます。
しかし、実際に意識しながら食べてみると、口から喉へと食べ物が移動する間にも、さまざまな感覚があることに気づきます。
「喉の味わいを体験で感じられたことが、すごく良かったです。」
毎日繰り返している「食べる」という行為にも、まだ気づいていない感覚がある。
その発見は、いつもの食事をもう一度新鮮なものにしてくれます。

食べ物を「分解して考える」と、料理の解像度が上がる
普段、食と向き合うときに意識していることを尋ねると、樋口さんから返ってきたのは、
「食べ物をなるべく分解して考えること」
という答えでした。
「和食が食べたい」「カレーが食べたい」と料理を大きなカテゴリーで捉えるだけでなく、使われている食材や調理工程、味や香りの組み合わせまで分解して考えてみる。
「どの材料を使っているのか、どの工程が違うとこういう味になるのか。そこを意識して食べると、料理ってすごく面白いんです。」
樋口さんは、この感覚を音楽に例えます。
最初はひとつの曲として聴いていた音楽も、演奏を学ぶとギターやベース、それぞれの音が聞こえるようになる。
食も同じです。味覚について学ぶことで、それまでひとつの「おいしい」だったものから、味や香り、食感、調理法など、一つひとつの要素が見えてくる。
つまり、料理を見る「解像度」が上がっていくのです。
松本さんが大切にしている「お皿の向こう側」
一方、松本さんが大切にしているのは、食材そのものだけではなく、その背景にある人や土地です。
「食材だけでなく、作り手の思いや背景にあるストーリーも一緒に伝えるようにしています。」
誰が、どこで、どのように作ったのか。
なぜ、この土地でこの食材が生まれたのか。
そうした「お皿の向こう側」を知ることも、食の楽しみを深くしてくれます。
味や香りといった感覚だけではなく、作り手や産地、文化、そして自分自身の経験や記憶まで。
「おいしい」という感覚は、実はさまざまな要素によってつくられています。
食を「学びたい」。でも、体験しながら学べる場所は意外と少ない
これからの食について話が及ぶと、樋口さんは、個人の嗜好はさらに細分化していくのではないかと話します。
一人ひとりが自分に合った食べ物や味わい方を求める時代。
一方で、物価上昇や気候変動など、食を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。
そんな時代だからこそ、松本さんは、
「学びたいという意欲は高まっているのに、学ぶ場があまりない。」
と感じているそうです。
本を読むだけではなく、実際に味わう。
自分の感覚で違いを確かめる。
そして、なぜそう感じたのかを科学的な知識と結びつける。
今回の対話から見えてきたのは、そんな「体験しながら食を学ぶ場」の可能性でした。

話はさらに、当社の主席研究員髙橋と樋口さんによる「学べるコラボディナー」のアイデアへ。
料理を楽しみながら、味や香りの仕組みを知る。食材の背景を知り、自分の感覚を確かめてみる。
食べることと学ぶことが一体になれば、食の楽しみ方はもっと広がるかもしれません。
「知っている味」から、「感じ取れる味」へ
味香り戦略研究所は、長年にわたり食品のおいしさを科学的に分析し、食品企業の商品開発やマーケティングを支援してきました。
その知見を、専門家だけのものにするのではなく、実際に「味わう体験」を通して伝えたい。
そんな考えから生まれたのが「味覚レベルアップ講座」です。
講座では、味、香り、うま味、喉で感じる味わいなどを、自分自身の感覚で確かめながら学んでいきます。
知識を増やすだけの講座ではありません。これまで気づかなかった味に気づく。違いを感じ取れるようになる。そして、いつもの食事が少し違って見えてくる。
食のプロである樋口さんが、「2つ分くらいレベルが上がった」と感じた一日。
次にレベルアップするのは、あなたかもしれません。「知ることで、おいしさはもっと深くなる。」食べることがもっと面白くなる体験を、ぜひ味わってみてください。
味覚レベルアップ詳細はこちら
https://mikaku.jp/seminar/2026/11606/
※2026年度の開催は終了しています。2027年度講座は4月開催予定です。

インタビュー後半はnoteで公開中!
後半では、ガチャガチャから飛び出した質問に答える「味研ガチャトーク」をお届けします。
食へのこだわりから、普段はなかなか聞けない話まで。講座とは少し違った樋口さん、松本さんの素顔が垣間見えるトークを、ぜひnoteでお楽しみください。
https://note.com/taste_and_aroma/n/ndb8b1b565495